就労支援フォーラム1日目
――「不正はなぜ蔓延るのか」から見えた、就労支援の現在地
就労支援フォーラム1日目は、正直に言って情報量が多く、頭が追いつかないほど濃密な一日でした。
しかし同時に、これまで現場で感じてきた違和感や疑問が、言葉と構造として整理されていく感覚もありました。
この日の大きなテーマは、
「不正はなぜ蔓延るのか
~指定と指導のあり方を含めて~」
でした。
農福連携の成功事例から始まった問い
冒頭で村木厚子氏から紹介されたのは、浜松の農福連携の事例。
当初は「農業はハードワークで、障害のある人には無理だろう」と言われていた現場で、毎年一人ずつ受け入れを進め、現在は24名が働いているという話でした。
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ハウス内にミストを導入(1基1200万円)
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「暑い・寒いは当たり前」という前提を疑い、環境を変えた
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結果として、収益性が高く、投資は早期に回収
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この取組が広がり、浜松全体が「ユニバーサル農業」へ
印象的だったのは、
「障害者(ニューカマー)が、産業全体を変えた」
という言葉でした。
厚労省から示された問題意識
― A型スコア方式・就労支援士・公的部門
続いて、厚生労働省の障害福祉課の大竹課長から、制度の現状と課題が示されました。
A型スコア方式について
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大量雇用の歯止めとして導入されたが、
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実際には高スコアの“抜け道”が多い
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生産活動シートなどでの対策を予定
障害者就労支援士(仮称)
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医療・福祉・就労をつなぐ専門人材
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既存資格(社労士、ジョブコーチ等)との整理が課題
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国実装に向けたロードマップを検討中
公的部門の就労支援
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トライアル雇用やジョブコーチ制度はあるが、
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現場では業務切り出しやマッチングがうまくいっていない
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自治体間で対応のばらつきが大きい
「もにす認定」は大丈夫なのか?
会場からは、もにす認定(障害者雇用に優良な中小事業主認定)についての不安も出されました。
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「心配だが、本当に大丈夫なのか?」
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書類は整っているが、実態が伴っているのか
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認定後のフォローやチェック体制の弱さ
「認定」がお墨付きではなく、免罪符になっていないかという問いが投げかけられました。
パネルディスカッション
「不正はなぜ蔓延るのか」
ここからが、この日の核心でした。
指定の入口では止められない現実(平松さん)
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指定申請時、書類が整っていればNGにできない
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名古屋市では、利用者からの評価が悪い事業所に対し、
独自基準で対応してきた
経営改善相談の実態(関原さん)
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A型の経営改善相談が非常に多い
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行政は決算書を見るのが苦手
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いきなり2000万円の赤字が翌年解消
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理由:「売掛金を入力してませんでした」
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→ 明らかに不自然
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指定取消はどこで起きやすいか
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職員配置のごまかしは、顕在化しやすい
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6年に1回の指定更新が、重要なチェックポイント
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社会福祉法人基準の決算様式を、
株式会社等に無理やり当てはめている現状
行政側のリスク
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悪しきA型を判断する明確な基準がない
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国家賠償請求が起きた場合、
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職員個人への賠償リスク
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そのため保険に加入している自治体も
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警察への相談も、受理されないケースが多い
「淘汰されるべき」という厳しい言葉
パネルでは、こんな指摘もありました。
「こうした事業者に利用者を取られるような経営をしているなら、淘汰されてしまう」
「業界再編が必要だ」
耳の痛い言葉ですが、制度の網をかいくぐる事業者が増えれば、真面目な事業者ほど苦しくなるという現実を突いています。
現場からの答え ― 工賃アップの実践者・砂長さん
最後に強く印象に残ったのが、工賃アップに取り組んできた砂長さんの話でした。
利用者に
「これ、自分で欲しい?」と聞いたら、
「家にあったら邪魔ですね」と言われた。
一瞬、言葉を失ったそうだ。
「……せめて好きって言って!(笑)」
しかし、その正直さに救われたとも言われていました。
「自分で買わない商品は、誰も買わない」
工賃アップは、
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加算
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制度
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書類
だけで実現するものではありません。
商品力、マーケット感覚、そして利用者の率直な声
それを真正面から受け止め、改善し続ける姿勢こそが本質だと、改めて感じました。
1日目を終えて
この日の議論を通じて見えたのは、
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不正は「悪意」だけで生まれているわけではない
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制度の隙間、行政の限界、人材不足が重なっている
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しかしそのツケは、利用者と誠実な事業者に回っている
という現実でした。
指定・指導・認定・加算
これらをどう設計し直すのか。令和9年度の報酬改定へ向けて、厚生労働省でも現在、真摯に取り組んでいると感じました。


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