
小泉委員(質問)
香川県は、瀬戸内国際芸術祭などを通じて、現代アートの聖地として国内外から高い評価を受けており、観光振興においてアートは重要な柱の一つとなっている。しかし一方で、アート観光資源は直島や小豆島といった島しょ部に集中しており、観光客の流れもそれら特定の地域に偏る傾向が続いている。結果として、混雑や環境負荷の問題も生じており、県全域に面的な波及効果をもたらす観光拠点の整備が課題だと考えている。実際には、香川県全域にアート・文化資源は点在している。「香川せとうちアート観光圏の整備計画」では、高松・小豆島・琴平を主たる滞在促進地区と位置づける一方で、近年は、さぬき市・東かがわ市で、瀬戸芸の新たな展開が始まり、県本土東部への広がりも見られる。また、「かがわ・山なみ芸術祭」など、山間地域での地元主導のアートイベントも増えており、まんのう町や綾川町では、現代アートと伝統芸能の両面から取り組みが進められている。こうした動きは極めて有意義だが、県全体として面的なネットワーク形成や拠点整備は道半ばであり、香川全域をアート県としてブランディングしていくには、より明確な支援策が必要ではないかと考える。例えば、新潟県では、複数市町が連携して開催する「大地の芸術祭」を通じて、山間部への観光客誘導と、地域活性化を両立させた好事例が存在する。香川県においてもこうした面的展開によって2泊3日以上の滞在型観光を促し、地域間の観光格差を是正する契機になるのではないか。
そこで、瀬戸内国際芸術祭の開催地以外の各市町でも、アートイベントや芸術祭を展開できるよう、県としてどのような支援を行っているのか。また、今後、県全域でのアート拠点化を進める上で、どのような方針で、支援を強化していかれるのか、ご所見を伺う。
(再質問)
香川せとうちアート観光圏の取り組みにより県下全域に、アートブランドの確立をしていきたいので、ぜひ、その方向で、施策を進めていただきたいと思っている。香川せとうちアート観光圏の枠組みを生かしながら、全県的な展開を目指す方向性に賛同する。
その上で、次に重要なのは、実際に目標に近づいているのかどうかをエビデンスをもって見える化し、施策をより精緻に改善していく、PDCAの仕組みだと考える。観光分野では、スマートフォンの位置情報を匿名加工した人流データを用い、人の流れを詳細に把握する取り組みが全国の自治体で広がっている。どこからどの時間帯に、どのルートを通って、どれだけの時間滞在したかなどの行動自体を可視化することで、回遊性向上や混雑緩和、交通整備や受け入れ環境の最適化に生かされている。特に、本県のように離島部を抱える地域では、港を起点とした人流の集中が見られ、どの港にどれだけの人が流入し、島内でどのように移動しているかの把握は、観光ルートや船便ダイヤの改善にも大きく寄与する。また、既存のアンケートやヒアリングではとらえきれなかった観光客の無意識的な動きや、満足度との因果関係を継続的かつ客観的に把握できる点も、こうしたデータ活用の大きな利点である。さらに、人流データを活用することで、イベントや施策の効果測定が可能となり、限られた観光予算の検証性、説明責任、アカウンタビリティも飛躍的に高まる。例えば、イベント前後で人流がどれだけ増加したかを定量的に把握することができれば、瀬戸芸のような、広範囲で同時開催されるイベントや、県立アリーナを活用したプロジェクションマッピングやクリスマスマーケットといった観光イベントにおいても、実際にどれほどの集客効果があったのかを詳しく見える化できる。また、広報施策やSNSなど、デジタル発信の効果も、人流で可視化されるため、費用対効果が高い施策に資源を集中するといった戦略的な絞り込みと最適化にも役立つ。このように、観光の質と持続性を高める上で、人流データの導入は、単なる観察ツールにとどまらず、施策の精度向上と財政的な透明性確保の両面において重要な基盤と考える。
そこで、香川県として、人流データを観光DXの基盤として導入し、来訪者の動線、滞在実態、居住地分析などを戦略的に活用していくお考えはないか、今後の導入検討状況を含めて、県当局の見解を伺う。
(要望)
データの取得に関して、検討していただけて、また、それをどう活用するのかが課題とのことで、例えば、今市町の方でも、そういったデータが不足している。次の手を打つ際の参考となる材料が、十分でないという声も聞いており、県がそういったデータを入手し、県から各市町各観光協会と連携することで、そのデータを使っていただき、それに基づいて、次なる判断の材料にしてもらうという手もあると思うので、検討していただきたい。
先程も出たアートブランドの確立、アート県かがわの実現に向けて、拠点の面的展開と人流データの活用はいずれも極めて重要な基盤だと考えている。アートの取組みが全市町に広がることで、観光客が一部地域に集中する傾向が是正され、地域間のバランスある振興が実現する。さらに、こうした面的見解は、周遊性を高め2泊3日以上の滞在型観光の促進にも直結し、宿泊、飲食、交通、体験型観光など、地域経済への波及効果も大きくなると考える。そして、人流データの活用により、イベントやプロモーションの効果を可視化できるようになり、費用対効果の高い施策立案や県事業の説明責任強化、リスク回避にも繋がる。ターゲット層の反応も把握できて、若年層、海外富裕層へ的確に訴求するような情報発信が可能となる。そして何より、人流データを軸とした分析環境の整備は、官民が連携して取り組むべき観光DXの推進にも資するものであり、新たな観光サービスや民間投資の創出にも繋がると期待している。
県として、今後、これらの方向性に沿って、前向きかつ実効的な取組みを進めていただきたい。
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(西尾交流推進部長) 小泉委員のアート県かがわの実現に向けた支援のあり方というご質問をいただいた。委員ご指摘の通り、本県は瀬戸内国際芸術祭などを通じて、現代アートの聖地として国内外からの高い評価を受けており、アートを活用したコンテンツやイベントは本県の観光振興に大きな役割を果たしていると認識している。 そこで各市町で実施されるアートイベントなどへの支援としては、県で持続可能な観光地域づくり補助金を設けており、市町や民間事業者などが取り組む、こうしたものへ経費の一部を補助してきている。 これまでのアート活用のコンテンツやイベントへの補助実績の具体例を申し上げると、香川ゆかりのアーティストがデザインした箱に香川のお菓子を詰め合わせる、アートとお土産を組み合わせた新たなお土産の開発を支援している。あと、瀬戸内海の海ごみを材料に、アート作品を作るサステナブルアートの展示会やワークショップなどの実施に対しても支援を行っているところである。 県全域でアート拠点化を進めるための方針については、本県において平成22年から、国の観光圏を整備するという観光圏整備法というのがあり、その法に基づき、県内全体を対象区域として、「香川せとうちアート観光圏整備計画」を策定している。これは必ずしもアートに特化したものではないが、瀬戸内海という地域資源とその圏域内に集積しているアートや文化資源を県域の強みととらえ、「香川せとうちアート」ブランドを確立させて、地域においてアートをはじめとする文化芸術資源を活用した、体験型コンテンツの充実や人材育成などに取り組んできているところである。これまでの具体的な取り組みとして、アートと伝統工芸をテーマとした高付加価値のコンテンツとして、香川漆芸の人間国宝作家によるトークサロンの開催や、金刀比羅宮の重要文化財である奥書院の特別案内と白書院貸切スペシャルランチなども、旅行商品として造成し、旅行会社への働きがけにも努めているところである。 今後も市町や民間事業者への支援を通じて、文化芸術資源を活用した主体的な取組みへの支援、情報発信を県として行っていくことで、県下全域で「香川せとうちアート」ブランドの確立に努めていきたいと考えている。
(西尾交流推進部長) 小泉委員の再度のご質問で、人流データの活用については、本県では毎年、香川県観光客動態調査を発表しており、これは調査員が観光施設の来訪者に対面で聞き取る方式(の調査)である。従来型の手法に基づいて、本県への来訪者の動線や滞在などの実態把握を行っている。 ご指摘のように近年はスマートフォンの普及により、人々の移動や滞留状況を、人流データとして高い精度かつリアルタイムに近い形で把握できるようになってきたことから、分析事業者に委託する費用がかかるが、観光分野において戦略的に活用する取り組みが、全国の自治体などでも徐々に広がっていることは承知している。こうした人流データを用いて、人の流れを詳細に把握することにより、回遊性の向上や混雑の緩和、受入環境の最適化に生かせる。そうしたものの他、観光プロモーションによる集客効果を「見える化」することが可能になり、今後の観光施策の策定や効果の検証、それから改善に向け、委員ご指摘のPDCAの取組みに有効な手法の1つと考えている。県でも過去に瀬戸芸を契機としたインバウンドの動向を分析するために、スマホデータを活用した動態調査を行って、インバウンド施策における課題を洗い出し、誘客施策の方向性の参考としたこともある。近年は国の「地域経済分析システム(RESAS)」や公益社団法人の日本観光振興協会のデジタル観光統計オープンデータなどが無料で提供されており、これらのデータも日頃から活用して、来訪者の動向や滞在実態などを分析することも有効と考えている。 PDCAの取組みだが、データだけあってもしょうがないので、これをいかに活用して政策に落とし込むか、また事業者へフィードバックする仕組みづくりも必要であると思う。そうした体制づくりなども必要になってくることが課題として挙げられると思っている。 今後もその人流データの導入とその活用については、他の自治体などの先進事例なども参考にしながら、本県の今後の観光振興に向けた取組みにとって、有効な手法となりうるか、調査・研究を行って参りたい。 |
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