
(質問)
厳しい行財政事情や社会課題が複雑化する中、官民連携によって、効果的に課題を解決するスキームとしてPFSペイフォーサクセスが注目されている。
PFS成果連動型民間委託契約方式は、社会課題の解決に対応した成果指標を設定し、その成果の有無で委託費を増減する官民連携の手法である。
従来型の委託事業では、事業活動の実施方法を仕様書に定めるため、民間事業者の裁量は小さい一方、PFS事業では達成すべき成果指標値の改善状況が指定され、その改善のためにどうするかは、民間のノウハウを活用するため、事業者に一定の裁量が付与される。
また、従来型の委託事業では、仕様書に定める事業活動の実施方法に則り、業務を実施したか、成果物が仕様書を満たしているかどうかを検査し、予め定めた委託料を支払うのに対して、PFS事業では、委託者が、成果指標値が改善したかを評価し、その成果により支払額が変動する。
すなわち、従来型の委託事業では、成果指標の改善状況に関わらず、支払額が固定であり、成果指標値を改善するインセンティブが働かないのに対し、PFS事業では、成果指標値の改善状況に対して支払額が連動するため、事業者が成果指標値を進んで改善するインセンティブが効果的に働く。
解決を目指す社会課題に対して、地方公共団体等においては解決のための事業の実施方法が明確でない一方、民間事業者側には、ノウハウの蓄積がある。目標を設定し、成果に応じた支払い条件を設定することで、民間事業者の意欲、ノウハウを引き出し、成果を上げている事例が数多くある。
PFSの1つの類型であるSIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)は、事業資金を民間の投資家や金融機関から提供してもらい、事前に設定した成果が達成された場合、自治体が投資家にリターンを支払い、成果が不十分であれば、リターンは減少となるという仕組みとなっている。
大きなメリットとして、大きな事業の実施が可能となること、中小企業が参入しやすくなることなどが挙げられる。これらは、民間の裁量が発揮されやすく、成果の改善状況によって支払い額が変動するので、先ほどのPFSの取り組みと同様に、民間の創意工夫によって、成果を期待しやすいのが特徴となっている。
平成27年度に経済産業省の委託事業として、「日本版ヘルスケア ソーシャル・インパクト・ボンドの基本的な考え方」が示された後、平成30年6月の定例会では、ソーシャル・インパクト・ボンドについての本県の取り組みについて、一般質問で採り上げられ、浜田知事から導入について検討するという答弁があった。
この点、本県で介護分野において、PFSやSIBを活用した取り組みについて伺う。
(長尾健康福祉部長)
結論から申し上げると、介護分野で、この成果連動型民間委託契約を活用した取り組みについては、これまでない。
委員も質問で触れられているが、平成30年に、SIBについて、当時の浜田知事が、先行している神戸市の取組みだったと思うが、まだ結果は出てなかったと思うが、その取組みに対する質問に対して、「幅広く研究して参ります」という答弁をさせていただいたと思う。
当時、たまたま私が健康づくりを担当しており、このSIBの手法について、我々が行っていた事業でがん検診の受診率を向上させるという施策があったが、このSIBの取組みに親和性があるということで、具体的な導入について検討した。
それで他県の事情を調べてみると、ほとんどは市町村が行っていたが、近県では広島県が県内の6市と一緒に連携体でこのSIBの取組みを、がん検診の受診率向上という目的で取り組んでおり、広島県の事例の検討をし、かつ、この事業に参画していた事業者の意見も直接伺いながら本県で実施可能かどうかについて検討を行った。
当時の検討結果としては、がん検診は市町が住民検診で行うもので、県が広域的に行うとなれば、一緒に賛同して実施していただける市町を巻き込む必要がある。
その際、市町においても、委託料、成果連動しない部分の固定費も含めて、委託料を拠出してもらう必要がある点、それから目標設定のあり方について、市町で、例えばがん検診の受診率がバラバラであるため、どこに目標を置くかについて、なかなか合意形成をとることが難しかったという点、SIBの方式では、金融機関とかクラウドファンディングから、その資金調達をするというスキームであるため、資金調達をして配当をする事務を行う中間支援組織を新しく作る必要があり、契約スキームが極めて複雑であったということで、通常の契約事務に比べて相当大きい事務負担がかかるという事情もあり、SIBの導入には至らなかったということである。結果的には、現時点においては、成果連動型の契約については、実績はない。
(再質問)
今回、広島県のがんの個別受診率をアップさせる取組みについて(検討)していただいたと思うが、最近になり、広島県の取組みも含めて、令和5年度末の時点で、国内の介護分野での事例が112件あり、その中には、県の取り組みも複数含まれていた。
その事例として、大阪府堺市の介護予防事業では、従来の介護予防施策だけでは、参加者が固定して、プログラムがマンネリ化するといった課題が解決されておらず、より効果的な取組みが必要と考えられて、PFSの導入に至っている。
また、成果指標として事業参加者の総数、継続参加人数、要介護状態進行遅延人数の目標値を定め、委託費4429万7000円を上限として、事業効果としては約1億1884万円の、介護給付費適正化効果が見込まれたという事業である。
また、愛知県豊田市のプロジェクトでは、趣味や運動、就労などにより、高齢者が社会参加し、社会活動量を増やすことで介護リスクの低減・介護保険給付費の削減を目標としている。
5年間で上限5億円の事業費で多くの方に参加してもらえるように、受託した事業者が新たなプログラムを取り入れながらサービスの提供をしている。
経済産業省は、内閣府や厚生労働省等と連携し、成果連動型民間委託契約方式の推進に関するアクションプランに基づき、PFS、SIBの活用を目指す自治体職員等に向けた情報整理を行っている。
令和6年2月に改定されたガイドラインでは、マーケットサウンディングのガイダンスを充実し、ヒアリングや事業説明会といった形で官民対話を丁寧に進めることで案件形成の成功率を高めようとしている。
その他、国の負担で専門家派遣の支援を受けられるメニューもある。
こうした成果を上げている事例や、国のメニューもある中で、本県が広域でそのスケールメリットを活かし、高齢者の健康増進に取り組めるよう、ぜひ、PFSの活用を図っていただきたいと思うが、長尾部長の考えを伺う。
(長尾健康福祉部長)
国内におけるこの成果連動型の契約方式の活用事例は増えており、現状ではご紹介いただいたように112件ということである。
内閣府の資料においても、医療や介護分野で、取組事例がいくつか紹介されており、例えば、行政だけでは考えつかないアイデアを得ることができたとか、あるいは、企業努力最大化を求めることができたというメリットが挙げられている。
一方で、先ほどの広島県の報告によると、通常の委託契約で発生しない特有の事務負担が大きいとか、あるいは、事業の組成・参加市との調整が複雑で時間を要し、その結果がんの受診勧奨時期が遅れてしまったとか、そういうマイナスの面もある。
いずれにしても、成果連動型民間委託という形態については、自治体にとってメリットもあり、高齢者の健康増進の取組みについて、選択肢の1つだと考えている。
県がこの契約方式を市と連携して広域で行う場合においては、他県の事例も参考にすることは当然であるが、複数の市町等としっかり意見交換を行って、合意形成をきっちり図った上で実施することが前提であると考えている。
現時点で、個別具体の案件があるわけでもなく、具体の市町からの働きかけ、あるいは県からの働きかけというものはないが、全国の事例、いろいろご紹介いただいており、その成果や課題などについても、いくつか報告が上がっているので、関心をもって情報収集に努めて参りたいと考えている。
また民間企業の創意工夫、あるいは、その成果について競い合うということについては、既存の契約形態、調達形態であるプロポーザル契約方式などもあるので、県、市町の事務負担も含めて、既存の契約方法と比較して費用対効果をしっかりと見極めながら検討していきたいと考えている。
(要望)
事務負担に関して、ソーシャル・インパクト・ボンドを使用した場合、中間組織といった形での事務負担の必要性がさらに出てくると思うが、必ずしもSIBをというわけではなく、幅広く、PFS全体の中で、委託を成果と連動させるという形で行うことで、より成果がアップするかと思う。
広島県の事例においても、一律にお知らせを出すのではなく、対象者に向けた、例えば何歳の男性とか女性とかそういった形で、対象者に向けた個別のメッセージを送っているようで、そうするとやはり受け手側は一律に同じ内容を受けたのではなくて、自分に該当しており、これはやばいみたいな形で直接受ける、突き刺さるというか、そういった形で、どうすればより受診率が上がるかという形で、創意工夫が凝らされた事例と聞いている。
成果が上がれば、今後の介護保険料が適正化されて、経費、費用が削減されるといったメリットに必ず繋がってくると思うので、ぜひ検討を重ねていただければと思う。
カテゴリー 一覧